夢屋 HOゲージ ブラスキット製作
1950年代の栗原電鉄には多数の車輛が配備されており、55年に誕生したM15形はその中でも最新鋭の装いで注目を集めました。シル・ヘッダーの無いボディデザインやオイルダンパー式の台車等、当時の地方鉄道の車輛では考えられない程に洗練されていたのです。M15の名称は「モーター車」のMと、「15m級車輛」の15から付けられており、他の栗原電鉄所属の車輛でも同様の法則で名称が付けられています。
画像の色を見て「アレ?」と思った方もいらっしゃるかもしれません。実はM15には3通りのカラーリングが存在しており、登場時は深緑と肌色で塗り分けられ、59年に本作例のカラーになりました。その後栗原電鉄の第三セクター転換間近に、似た配色ながらも屋根が紺色に、ボディの2色は国鉄特急色に近い色合いに変更となり、廃車となる1995年までそのカラーで活躍しました。
今回は歴史深い車輛を再現していきます!
このキットは処理が少々手間がかかります。前面の継ぎ目処理や各部品の接合の処理はもちろんの事、付属しているサッシ等の薄いパーツにバリが残っており、綺麗に処理しなければなりません。また無加工で取付けられない部品もある為、ハンダを流す前に必ず部品同士を合わせて見て、干渉しないかどうか確かめて都度処理していきます。
キットのテールライトは一般的な丸型が付属していますが、実車は旧型国電によく見られるガイコツ型の形状ですので、マッハ製の部品に交換しました。また屋根の渡り板は2枚付ける様に説明書に指示が入っていますが、こちらも実車の写真を見るとM15形は1枚の渡り板である事が分かる為、こちらも実車にあわせます。
曲者なのが前面のジャンパ栓やカプラー等を支えるパーツです。開放テコを挿し込むポイントが造形されていますが、キット状態では完全に真っ平らな板で入っている為、破損しない様気をつけながら板を曲げていきます。それなりの厚みがある為、曲げる時はペンチ等でしっかり力を入れましょう。ジャンパ栓基部は固定する穴に合わせて曲げて向きを揃えてからハンダでとめていきます。
塗装はお預かりした資料に合わせて、栗原電鉄時代の黄色味が強い色味で調色します。単輛かつ15mの短い車輛ですが、半数以上の窓にHゴムが入る為、塗り分けは見た目以上に多いのが特徴です。角のアールに合わせてポンチで円を切り出し、カットして四隅に貼っていくと、綺麗な角を再現できます。
完成したM15形は、積み重ねた歴史が垣間見える味わい深い仕上がりとなりました!