マスターピース HOゲージ ブラスキット製作
長野電鉄において初の全鋼製車体を有した車両が、本作例の原型となる長野電鉄デハ350形です。この車両が誕生したのは1927年で、同時期に製造された車両は形式番号こそ異なれど、外見は非常に似ており、いずれも川崎造船所において製造された事から「川造型」と愛称づけられていました。
1980年まで現役だった本車両は数度の改修や改番を繰り返しており、最終時はモハ600形および610形として活躍しました。
今回は最終時の610形を再現しました!
マスターピース製のキットは他社製のブラスキットと異なる構造になっている点が多く、中でも薄い真鍮板を重ねて車体を形成して行くスタイルは、ワールド工芸製キットやNゲージのブラスキットと似ています。
構造上組む前は強度が高く無いため慎重に作業する必要があるものの、車体が組み上がるとかなりの強度になります。
折り込みやはめ込みを繰り返して形状を出して行きますが、この車両はなんと前後で顔面の形状が異なり、それに応じてキットも前後で若干の差異がある為くれぐれも間違えない様に注意して組立てましょう。
本車両は時期や形式番号によって僅かに違いが出る車両です。分かりやすい所ではパンタグラフは時期によって搭載しているタイプが異なるため、予め再現する車両を定めてから作業に取りかかりましょう。
塗装は実車のカラー写真を参考に調色し、彩色しました。
一見特急色にも見える赤とクリーム色は雰囲気を出すため、鮮やかになり過ぎない様に色味を調整しています。今回はお客様のご希望で半光沢仕上げとしてあります。
キットにはインレタが付属していますが、エンド表記は付属していないためこちらは別売品を用意する必要があります。またヘッド・テールランプ等のレンズパーツも無い為、こちらも別途用意しました。丁度いい径のレンズが無い場合は、透明プラスチックの棒(プラモデルのランナー等)をライターであぶり伸ばしてからはめ込んだり、最近手頃に入手出来る様になった紫外線硬化タイプのクリアレジン等で自作する方法もあります。
本作例ではヘッドライトをクリアレジンで対応しました。
完成した車両は、歴史を感じる深みある作品に仕上がりました。
前後で顔が異なるので、様々な角度から楽しめる車両にもなりました。